普段私たちが何気なく使っている鉄道。
その“安全”は誰がどうやって守っているか知っていますか?
今回は線路を守る『保線業務』について、鉄道会社現役社員の視点からその実態・実務を詳しく解説します。
前回はPart1として組織概要と入社初期業務について解説しました。

今回は【検査班の業務分担(軌道変位)】について解説させていただきます。
この記事で分かること・オススメな人
- 世間で知られていない保線業務の実態
- 入社初期に配属されることが多い検査班の業務分担
- これから鉄道会社へ就職を考えている方、保線関係の業務に興味のある方
検査班内での業務分担
保線における検査班では、その対象物や保全方法によりグループや担当が分かれます。
これも鉄道会社により異なると思いますが、私のところでは以下のように業務分担されています。

軌道変位とは
鉄道の線路(軌道)は、本来設計された正確な位置と形を保っていなければなりません。
しかし、時間の経過や列車の重み、地盤の動きなどによって、線路が少しずつズレたり、ゆがんだりすることがあります。
このズレのことを「軌道変位(きどうへんい)」と言います。
軌道変位が大きくなると、列車の揺れや脱線リスクが高まるため、保線作業ではこのズレを定期的に測り、修正しています。
軌道変位を構成する5つの要素
軌間(きかん)
- 説明
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左右のレールの内側の距離です。日本の在来線では1,067mmが基本(一部私鉄や新幹線は1,435mm)です。ここが広すぎたり狭すぎたりすると、車輪が脱線する危険があります。
- 例
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自転車のタイヤが走る溝が狭かったり広すぎると走りにくい、それと同じです。
通り(とおり)
- 説明
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線路を上から見たときの曲がり具合で、左右に蛇行していないかを見ます。直線の線路が波打っていると、車両は横揺れします。
- 例
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細い一本道が右に左に少し曲がってしまっている状態です。
高低(こうてい)
- 説明
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線路を横から見たときの上下のデコボコです。滑らかに見える線路も、実は上下に小さな波があります。これが大きいと車両が上下に揺れます。
- 例
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車でガタガタ道を走っているときのあの振動です。
水準(すいじゅん)
- 説明
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左右のレールの高さの差です。カーブでは内側と外側で高さをわざと変えますが、直線では同じ高さが理想です。差が大きいと、車両が傾いてしまいます。
- 例
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テーブルが片方だけ少し高くなっていると、物が転がるイメージです。
平面性(へいめんせい)
- 説明
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レールが全体として平らな面を保っているかを見ます。軌間・通り・高低・水準がバランスよく整っているかの「総合的な指標」です。
- 例
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きれいに整えられた床と、あちこち歪んだ床の違いみたいなものです。
軌道変位は、線路が安全かつ快適に列車を走らせるためにとても重要なポイントです。「幅・曲がり・デコボコ・傾き・総合的なガタガタ」をしっかり見て、異常があればすぐにメンテナンスすることで鉄道は日々安全に運行されています。

まとめ
入社初期に配属されることが多い検査班、その中での業務分担のひとつが「軌道変位」です。
軌道変位とは、簡単に言えば線路が曲がったりデコボコしたりしていないかを確認する作業のことです。
一見シンプルに思えるかもしれませんが、実はこの測定にはミリ単位の精密な管理が求められます。
例えば、線路が10センチも曲がっていたとしたら、間違いなく列車は脱線してしまいます。
あの大きな電車を安全に走らせるための線路ですが、想像以上に繊細に保全し続ける必要があるのです。
以上、【検査班の業務分担(軌道変位)】について解説させていただきした。
こちらの内容につきまして、ご指摘や質問、リクエスト等ございましたら是非コメントいただけると嬉しいです。
出来るだけ速やかにご返信させていただきます。
これからも保線のリアルをお届けしていきますので、興味がある方はぜひ次回楽しみにしていてください。
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