普段私たちが何気なく使っている鉄道。
その“安全”は誰がどうやって守っているか知っていますか?
今回は線路を守る『保線業務』について、鉄道会社現役社員の視点からその実態・実務を詳しく解説します。
前回はPart2-3として検査班の業務分担(レール)について解説しました。

今回は【検査班の業務分担(分岐器)】についてです。
この記事で分かること・オススメな人
- 世間で知られていない保線業務の実態
- 入社初期に配属されることが多い検査班の業務分担
- これから鉄道会社へ就職を考えている方、保線関係の業務に興味のある方
検査班内での業務分担
保線における検査班では、その対象物や保全方法によりグループや担当が分かれます。
これも鉄道会社により異なると思いますが、私のところでは以下のように業務分担されています。

分岐器とは
分岐器(ポイントとも呼ばれる)は、列車を別の線路に進行させるための装置です。
駅や車両基地、複線の合流・分岐地点など、鉄道運行に欠かせない設備で線路の中でも特に複雑かつ重要な構造を持ちます。
構造が複雑なため他設備と比較すると繊細に保全していく必要があり、怠ると電車の方向を指定できないことや、最悪の場合は脱線してしまうこともあります。
分岐器の主な構造部

①トングレール
分岐器の中で進路を切り替える「動くレール」です。
列車の進む方向に応じて左右に動き、車輪を目的の進路へと誘導します。
レールの先端が薄くなっていて、列車が通るたびに強い力がかかるため、すり減りやすくこまめな検査と整備がとても大切です。
②基本レール
分岐器の「固定されたレール」で、土台の役割を果たします。
トングレールがぴったりと収まる場所で、列車がスムーズに通過できるように支えています。
③リードレール
トングレールからクロッシング(レールが交わる部分)までをつなぐレールです。
列車がカーブを曲がるときの「ガイド」の役割をしており、列車が安全に進路変更できるようになっています。
④ガードレール
クロッシングの近くに取り付けられる「補助レール」です。
車輪が正しい位置を走るようにフランジ(車輪の縁)を誘導し、脱線を防ぐ働きをします。
安全の要なので、すり減りや緩みがないかをしっかり点検します。
⑤クロッシング
2本のレールが交差する部分で、列車の車輪がスムーズに通り抜けられるよう特別な形をしています。
大きな力により削れやすく衝撃を受けやすいため、耐衝撃性に強い素材を使用したり定期的な検査が欠かせません。
分岐器の検査ポイント
分岐器は構造が複雑なため、通常のレールと比べて損傷や削れ具合の進行が早い傾向があります。
主な検査項目は以下の通りです。
分岐器を構成する各レールや部品が傷ついていないか、削れている箇所がないかを確認する検査です。
特にトングレールやクロッシングなど、列車の力が集中する部分は小さな傷でも進行すると重大なトラブルにつながるため、目視や専用機器を使ってしっかり点検します。
トングレールは進路を切り替える動く部分なので、列車の車輪が当たるたびに少しずつ削れていきます。
そのため、トングレール全体について厚みが基準より薄くなっていないか、先端や側面が均等にすり減っているかを測定し交換時期を見極めます。
これを怠ると、最悪の場合列車がトングレールに乗りあがり脱線するリスクが高まります。
Part2で説明した軌道変位の分岐器版で、分岐器全体の「線路のゆがみ」や「ズレ」を測定する検査です。
分岐器内は複雑な構造をしてることから、普通のレール部と比較すると厳しい基準が定められており、厳正な管理を必要とします。
専用の測定器で高さ、幅、方向のズレを細かくチェックして、必要に応じて調整作業を行います。
まとめ
分岐器は列車の進路を変える要となる装置であり、異常が起きれば運行全体に大きな影響を及ぼします。
そのため、検査班は日々細心の注意を払いながら点検と保全作業を行っています。
安全で正確な鉄道運行を支える裏方の仕事として、非常に重要な役割を担っています。
以上、【検査班の業務分担(分岐器)】について解説させていただきした。
こちらの内容につきまして、ご指摘や質問、リクエスト等ございましたら是非コメントいただけると嬉しいです。
出来るだけ速やかにご返信させていただきます。
これからも保線のリアルをお届けしていきますので、興味がある方はぜひ次回楽しみにしていてください。
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