普段私たちが何気なく使っている鉄道。
その“安全”は誰がどうやって守っているか知っていますか?
今回は線路を守る『保線業務』について、鉄道会社現役社員の視点からその実態・実務を詳しく解説します。
前回はPart3として検査班の業務分担(ロングレール・定尺)について解説しました。

今回は【検査班の業務分担(レール)】についてです。
この記事で分かること・オススメな人
- 世間で知られていない保線業務の実態
- 入社初期に配属されることが多い検査班の業務分担
- これから鉄道会社へ就職を考えている方、保線関係の業務に興味のある方
検査班内での業務分担
保線における検査班では、その対象物や保全方法によりグループや担当が分かれます。
これも鉄道会社により異なると思いますが、私のところでは以下のように業務分担されています。

レールとは
前回記事にしたロングレール・定尺レールと同じレールですが、ここでの業務分担は材料としてのレール保全を指しています。
材料としてのレール保全とは、レールに対する傷や削れ具合などを管理し、適切な時期に適切な箇所の交換を行うということを指します。
レールの種類(規格)
日本の鉄道では、レールは断面形状と1mあたりの重量によって種類が決められています。
代表的なものを説明します。

- 1.40Nレール(約40kg/m)
-
支線やローカル線、保守用仮設線路など軽めの車両が通る路線で使われる。
比較的軽いので施工がしやすいですが、重い車両には向かない。 - 2.50Nレール(約50kg/m)
-
都市部の中距離路線、ローカル線の主要区間で使われる。
強度と作業性のバランスが取れており、日本で広く普及しています。 - 3.60Nレール(約60kg/m)
-
幹線や貨物路線など、重い車両や高速列車が走る区間で使われる。
重量があり頑丈なので、特に幹線鉄道で活躍します - 4.60Kレール(約60kg/m)
-
「K式断面」であり国際標準的な断面形。(N式断面は日本独自の規格)
新幹線、高速鉄道、高規格な在来線区間で使われる。
断面が広くより安定した走行を支える設計で、N式よりも高強度。
レール傷の種類と説明
シェリング

- どんな傷?
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レールの踏面(列車が直接接触する上面)にできる小さな剥がれや欠けのこと。
- 原因
-
金属疲労によって表面層がポロポロとはがれる現象です。
- 影響
-
進行するとレールが割れる危険があり、走行音も悪化。
水平列

- どんな傷?
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レールの内部で水平方向に割れが広がる現象です。
レールの頭部内側で進行するため、表面からは見えにくい。 - 原因
-
シェリングや内部応力が原因で亀裂が広がる。
- 影響
-
最終的にはレールが折れてしまう危険があるので、超音波などで内部の亀裂を調べる検査が必須。
きしみ割れ

- どんな傷?
-
レールと車輪が擦れ合うことで発生する、微細なひび割れです。
特にカーブ区間などで目立ちます。 - 原因
-
車輪のフランジとレールの接触が強い場所で発生。
- 影響
-
放置すると大きな割れにつながり騒音も増えるが、既往の研究ではレール折損は発生しないと言われています。
横裂(おうれつ)

- どんな傷?
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レールの断面に対して横方向に進む亀裂です。
水平裂とは異なり、比較的表面から確認しやすいこともあります。 - 原因
-
繰り返し荷重や金属疲労。
- 影響
-
最終的には破断につながるため、早期発見が重要。
腐食・電食(ふしょく・でんしょく)

- どんな傷?
-
レールが錆びる(腐食)、または電気的な影響で劣化する”電食(電蝕)”です。
- 原因
-
腐食・・・雨水や湿気などの自然要因。
電食・・・電車の回路や漏電が主な要因。 - 影響
-
断面減少により強度が低下、最悪の場合レール破断に。
他にはゲージコーナー亀裂、縦裂(じゅうれつ)などがあります。
まとめ
この記事では、鉄道の安全を陰で支える「検査班」のレール保全業務について、鉄道会社の現役保線社員の視点から詳しく解説しました。
各種レールの特徴や用途を紹介し、さらに現場で問題となるレール傷の種類とその原因・影響も取り上げました。
これから鉄道会社を目指す方や保線業務に興味のある方、鉄道の裏側を知りたい方にとって、現場のリアルな情報を得られる記事になっています。
以上、【検査班の業務分担(ロングレール・定尺)】について解説させていただきした。
こちらの内容につきまして、ご指摘や質問、リクエスト等ございましたら是非コメントいただけると嬉しいです。
出来るだけ速やかにご返信させていただきます。
これからも保線のリアルをお届けしていきますので、興味がある方はぜひ次回楽しみにしていてください。
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